遺産分割協議書と法定相続情報一覧図の違いをわかりやすく解説
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相続手続きでよく聞く「遺産分割協議書」と「法定相続情報一覧図」。どちらも重要ですが、役割はまったく別物です。本記事では、作成の目的・使いどころ・実務での使い分けを行政書士監修の観点でやさしく整理します。
1. 遺産分割協議書とは
相続人全員で遺産の分け方(不動産・預金・有価証券・動産など)に合意した内容を記録する書類です。合意形成の証拠となり、のちの紛争予防に役立ちます。
- 作成者:相続人全員(署名・実印、印鑑証明書添付が実務的には無難)
- 用途:不動産の登記名義変更、預貯金の払戻し・解約、相続税申告書の添付など
- 法的性質:私文書だが、全員の合意を示す強い資料。内容が明確であることが重要
2. 法定相続情報一覧図とは
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式に基づき、「誰が法定相続人か」を証明する法務局の交付書面です。戸籍束の原本一式の代替として利用でき、手続きがぐっと楽になります。
- 作成・申出:戸籍収集 → 一覧図(様式)作成 → 法務局に申出 → 無料で複数通交付
- 用途:不動産登記の添付、銀行・証券・保険などの各種相続手続き(多くの機関が受理)
- 特徴:同一内容の写しを複数入手できるため、複数窓口で同時並行手続きに便利
👉 一覧図の基本と作り方は、前回記事「法定相続情報一覧図とは?」で詳しく解説しています。
3. 役割の違い(一覧表)
項目 | 遺産分割協議書 | 法定相続情報一覧図 |
---|---|---|
目的 | 誰が何を相続するかの合意書 | 誰が相続人かの関係図の証明 |
作成主体 | 相続人全員(合意・署名押印) | 法務局(戸籍に基づき交付) |
主な提出先 | 法務局(登記申請)・金融機関・税務署など | 法務局(登記申請添付)・金融機関など |
部数 | 原本1部+必要に応じて写し | 無料で複数枚の写し交付可 |
頻度 | 分割内容の確定時に作成 | 各手続きの証明用として随時 |
4. 手続きでの使い分け
- 不動産登記:分け方の証明として遺産分割協議書、相続人関係の証明として一覧図。
- 銀行・証券:払戻しの根拠に遺産分割協議書、相続関係の確認に一覧図。
- 同時並行手続き:一覧図は複数枚入手可。各窓口へ同時提出しやすい。
5. 作成時の注意点
- 協議書は相続人全員の合意・署名押印が前提。漏れがあると無効リスク。
- 一覧図は戸籍の収集漏れ(認知・養子・再婚などの経歴)があると訂正が必要。
- 実務では協議書+一覧図をセットで準備すると審査がスムーズ。