法定相続情報一覧図とは?自分で作成する方法と手続きの流れをわかりやすく解説

ご家族が亡くなられたあとの相続手続きでは、不動産の名義変更や預貯金の解約など、さまざまな場面で「亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等」の提出を求められます。複数の窓口へ分厚い戸籍の束を何度も提出したり、書類の返却を待ったりするのは、心身ともに負担となりがちです。

こうした手続きの負担を軽減するために設けられているのが、法務局の「法定相続情報証明制度」です。この制度を利用して交付される「法定相続情報一覧図の写し」があれば、多くの相続手続きで、戸除籍謄本等の束に代えて一覧図の写しを利用できます。

「一覧図は専門家に頼まないと作れないのでは」と思われるかもしれませんが、要件を満たせば相続人ご自身で作成し、法務局へ申出することが可能です。

この記事では、法定相続情報一覧図の概要から具体的な活用場面、ご自身で作成・申出する6つの手順、注意点までを順を追ってわかりやすく解説します。

法定相続情報一覧図とは?制度の基本を整理

法定相続情報一覧図とは、亡くなられた方(被相続人)と、その遺産を相続する権利を持つ方(法定相続人)の関係を一覧にまとめた図です。

この一覧図を登記所(法務局)に提出し、内容を公的に証明してもらう仕組みを「法定相続情報証明制度」と呼びます。

制度の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 申出人が、収集した戸除籍謄本等の束と、自ら作成した「法定相続情報一覧図」を法務局へ提出する。
  2. 登記官が提出書類を精査し、戸籍の内容と一覧図の記載が正しく一致しているかを確認する。
  3. 確認が完了すると、登記官の認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」が交付される。

法務局で保管および写しの交付を受ける際の手数料は無料です。ただし、市町村の窓口で戸籍謄本等を取得する際の発行手数料や、法務局への郵送料・交通費などは別途自己負担となります。

法定相続情報一覧図はどんな手続きで使える?

交付された「法定相続情報一覧図の写し」は、主に以下のような相続手続きで利用できます。

一覧図だけですべての手続きが終わるわけではない点に注意

法定相続情報一覧図は、あくまで「誰が法定相続人であるか」を客観的に証明する公的書面です。

実際の手続きでは、一覧図に加えて各機関所定の「相続届」をはじめ、「遺産分割協議書」「印鑑証明書」などが別途必要になるのが一般的です。手続き先ごとに求められる提出書類一式を事前に確認しておきましょう。

法定相続情報一覧図を作成する3つのメリット

一覧図を作成・申出することには、実務上主に3つの利点があります。

メリット1:戸籍一式を何度も提出する負担を減らせる

一覧図制度を利用しない場合、各金融機関や登記所の窓口へ行くたびに、何通にも及ぶ戸除籍謄本等の原本一式を提示し、窓口で確認やコピーが終わるのを待つ必要があります。一覧図の写しを取得しておけば、厚みのある戸籍謄本の束を持ち歩く必要がなくなり、提出や管理の負担を軽減できます。

メリット2:複数の相続手続きを進めやすくなる

法務局では、必要な通数の写しを交付してもらうことができます。例えば、手続きを行う銀行が複数あり、あわせて法務局への登記申請も控えている場合、それぞれに提出できるよう必要通数を取得しておけば、書類の返却を待たずに各手続きの準備を進めやすくなります。

メリット3:法務局での写し交付手数料が無料

行政機関の証明書は1通あたり数百円の手数料がかかるケースが多いですが、法定相続情報一覧図の保管・認証・写しの交付は無料です。将来の手続きを見据えて必要通数を取得しても、法務局側の交付手数料は生じません。

法定相続情報一覧図は自分で作れる?

被相続人の相続人(またはその相続人の地位を承継した方)であれば、特別な資格がなくても、ご自身で一覧図を作成し法務局へ申出することが可能です。

なお、平日に法務局へ行く時間が取れない場合や手続きを任せたい場合は、委任による代理人を通じて申し出ることも認められています。代理人になれるのは、親族などのほか、法律で定められた資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士)に限られています。

相続関係が比較的単純な場合には、ご自身で手続きを進めることも可能です。一方で、相続人の確認が難しい場合などは、無理をせず専門家への相談を検討することも大切です。

自分で作成・申出する6つの手順

ご自身で法定相続情報一覧図を作成・申出する場合、大きく分けて次の6つのステップで進めます。

ステップ1:必要な戸籍等を集める

まずは相続関係を確認・証明するための公的書類を市区町村の窓口で収集します。

兄弟姉妹が相続人になるケースなどでは、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍等も必要となり、収集する書類の範囲が広がります。

ステップ2:法定相続人を確認する

集めた戸籍謄本を古い年代から順番に読み解き、法律上の相続人が誰であるかを正確に確認します。配偶者の有無、子や孫(直系卑属)、父母や祖父母(直系尊属)、兄弟姉妹(傍系血族)の有無によって、誰が相続人となるかが法律で決まっています。

ステップ3:法定相続情報一覧図を作成する

法務局が定めているルールと記載例に沿って、白紙のA4用紙に一覧図を作成します(パソコン作成・手書きのどちらも可)。

主な記載事項は以下のとおりです。

続柄の記載について、制度上は単に「子」と記載することもできますが、その場合は相続税の申告等で利用できないことがあります。相続税申告などで一覧図を利用する予定がある場合は、戸籍に記載される続柄(長男・長女・養子など)での記載を検討するとよいでしょう。

ステップ4:申出書を準備する

法務局のWebサイト等から「法定相続情報証明制度の申出書」の様式をダウンロードし、必要事項を記入します。申出人の住所・氏名・連絡先、被相続人との続柄、利用目的、必要通数、被相続人名義の不動産の有無などを記載します。

ステップ5:管轄の法務局へ申出する

書類が揃ったら、以下のいずれかの地域を管轄する登記所(法務局)へ持参または郵送で提出します。

  1. 被相続人の死亡時の本籍地
  2. 被相続人の最後の住所地
  3. 申出人の住所地
  4. 被相続人名義の不動産の所在地

郵送の場合は、簡易書留などの追跡可能な方法を利用し、返信用の封筒(切手を貼り付け、宛先を明記したもの)を同封します。

ステップ6:認証文付きの写しを受け取る

法務局で内容の確認が完了すると、登記官の認証文が付された一覧図の写しが交付されます。提出した戸除籍謄本等の原本一式も、このタイミングですべて返却されます。

作成する前に知っておきたい注意点

写しの再交付ができるのは「当初の申出人」のみ

交付後に追加で写しが必要になった場合、法務局へ再交付を申請できます。ただし、再交付を請求できるのは当初の申出書に「申出人」として記載された相続人のみです。他の相続人が単独で再交付を求めることはできないため、誰を申出人にするかは事前に確認しておきましょう。

また、法務局における一覧図の保存期間は、申出日の翌年から起算して5年間です。5年を経過した後は再交付を受けられなくなります。

続柄の記載方法は提出先の用途を考慮する

前述のとおり、続柄を単に「子」と記載して交付を受けると、税務署での相続税申告手続きにおいて別途戸籍等の確認を求められることがあります。提出先の用途に合わせて記載方法を選択してください。

法定相続情報番号とは(補足)

2024年(令和6年)4月1日から、不動産登記の申請等では、法定相続情報番号を申請書に記載することで、法定相続情報一覧図の写しの添付を省略できるようになりました。

法定相続情報番号を利用できるのは不動産登記の申請等の手続です。民間金融機関や税務署など、現時点で番号単独での手続きに対応していない窓口も多いため、当面は紙の「一覧図の写し」を手元に取得しておく運用が基本となります。

自分で作るのが難しいケース

以下のような事情がある場合は、戸籍の収集や図の作成難易度が高くなります。

このようなケースでは、無理にご自身だけで抱え込まず、司法書士や行政書士といった専門家に相談することも検討してください。

Web上で一覧図の作成を進められる「ゆい」

法定相続情報一覧図の作成で多くの方が戸惑うのが、「決められた配置ルールに沿って家族関係の図をきれいにレイアウトすること」です。WordやExcelなどで罫線を引いて整える作業には、思いのほか時間と手間がかかります。

「ゆい|法定相続情報作成システム」は、画面の案内に沿って親族関係の情報を入力していくことで、法定相続情報一覧図のレイアウト作成をWeb上でスムーズに進められる支援ツールです。

複雑な作図作業を効率化し、ご自身で進める相続手続きの第一歩をサポートします。

法定相続情報一覧図の作成を、画面の案内に沿って始めてみる

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まとめ

法定相続情報一覧図は、戸籍謄本を何度も集め直したり提出したりする負担を軽減し、不動産登記や預貯金解約をスムーズに進めるための便利な公的仕組みです。

まずは必要な戸籍を集め、どのような相続関係になっているかを整理することから始めてみましょう。

執筆・システム開発:行政書士 境 康雄(株式会社結 代表)

行政手続きの実務知見に基づき、法務省公表の制度要領に準拠して解説・システム設計を行っています。

参考公式情報(法務局)